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日、『グランド・ブダペスト・ホテル』を観に行った折、上映前の劇場予告で『思い出のマーニー』を瞥見。未だ封切り前のことで原作も未読でしたから、所詮はスレた読み手の妄想に過ぎないのですが。

各場面に潜ませた、伏線だの隠喩だの。語り手の想いを籠めたアレやコレやが、手に取るように“読めて”しまって……不意に湧き上がった怒濤の如き懐旧と慚愧の念に、枕かぶってウヒャ〜!!! と絶叫したい心持ちになってしまいました。

勿論、其処こそが製作陣の企図するところ 、なのでしょうけど……

その昔、リアルに多感な十代を女子校&女子寮で過ごした小母ちゃんは(と書いてて既に、甘酸っぱくも小っ恥ずかしい思い出が!)ウッカリ観に行ったが最後、全編に渉って変な声が出そうになっちゃいますがな〜。

そんな性分ゆえ、ジブリアニメの一番シックリ来る&お友達になりたい登場人物って、依然、『魔女の宅急便』のウルスラ嬢(と言っても、作中では一度も名前が出て来ない、森の中の小屋で油絵の大作を描いてたお姉さん)だったり。

『魔法ってさ、呪文を唱えるんじゃないんだね』
『うん。血で飛ぶんだって』
『魔女の血か……。いいねぇ、私そういうの好きよ。
 魔女の血、 絵描きの血、パン職人の血。
 ……神様か誰かがくれた力なんだよね。おかげで苦労もするけどさ』

デビュウ3年目にして誠に初々しい高山みなみ先生の、一人二役の対話だったとは俄に信じ難い渾身の超絶美技も相俟って、素晴らしく印象的かつ素敵に凛々しい“The handsome woman”でしたよねぇ……たまらんvvv

などという経緯もありつつ、Amazonさんのカートに“今は買わない”で数ヶ月放置してた、荒川 弘氏の『百姓貴族』第3巻を購読。『鋼の錬金術師』は単行本発刊毎に拝読しておりましたが、こちらと『銀の匙 Silver Spoon』は、自分の中で読みたい気持ちが高まってくるのを待って、おもむろに手を伸ばす作品です。

描き手のお人柄が真っ直ぐに顕れてるから、彼女と話をしたくなった時に会いに行く感じ。勿論、個人的に存じ上げてる訳じゃないんですが、拙宅では家族一同、図々しくも「荒川さん」呼ばわりさせて戴いちゃってます。

圧倒的な親近感と絶対的な信頼感の所以は、『血で描く』描き手だ、ってことが手に取るように“読めて”しまうから、なんでしょうねぇ。

読者が如何に感じ何を考えようとも、全部まとめてズバンと受けとめるぜ!という安定の潔さ。紛れもなく“百姓の血”、中でも最強の“開拓農民の血”で描いてやるぜ!って覚悟が、全てのページからヒシヒシと伝わって来ます。

やはり“語る力”を以て生業とするならば、斯く在りたし。

枕かぶってウヒャ〜!!! と絶叫したくなってる観客の『横に座り、そっと寄りそうような映画を、僕は作りたい』だけってのは、どうなの? 個人的な嗜好は、それぞれお有りでしょうが、プロならば『この映画一本で世界を変えよう』って位の覚悟が欲しい、と思っちゃうわけですよ小母ちゃんは。

翻って自分自身は、『血で書く』散文書きに果たしてなり得るのか?

「荒川さん」からガッツを分けて戴ける『百姓貴族』第3巻、安定のお奨めです!