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ぼくも漁師の真似事をして釣竿を出してみたが、海は眠っているように静かで、期待する魚信のひとつもなかった特價機票
釣りにも飽きたころ、いきなり竿が海中に引き込まれた。しばらく頑張ったが手元まで引き上げることはできず、いくどか水面に白い腹を見せたのは大きなボラだった。ついには糸を切られてしまい、それで釣りはあきらめた。
一瞬の海の怪物との出会いのようだった。そのとき静かな海が動いたのだった。
あの日以来、あの東北の地での海の災厄以後、海という存在は特別なものになってしまったかもしれない。海は歳月をあの日に、いっきに引き戻してしまうのだ。

ここ小島は、紀伊半島の一角にある吸塵機
南海沖地震が近く発生するかもしれないといわれている。海のトラフはすぐ近くにある。あっという間に大津波は、小高いところにある神社さえやすやすと呑み込んでしまうだろう。
その時ここの人々は、どこへ逃げるのだろうか。
おもわず背後の山を見上げてしまう。どこまで駆けのぼれるか、人々の生死を分けるのは山のどの辺だろうか。
そんなことを考えながら、ぼくの思いはすでに山を駆けのぼっている。息せき切って逃れても逃れても、海の怪物は追いかけてくるだろう。
いま山の上には、掃き残したような雲が流れるでもなく流れて、秋の澄みきった空がある。その空もまた、深い海の色をしていた郵輪旅行團